ECU制御システムのトラブルシューティングの方法  電気回路の点検方法および進め方




  1. 基本点検
    1. 電子部品の抵抗値測定条件


      1. 特に明記のない場合を除き、抵抗はすべて周囲温度20°Cで測定する。車が走行したすぐ後の高い周囲温度で測定した場合は、抵抗値は規定値外になるので、エンジンが冷えてから測定を行う。



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    2. コネクターの取り扱い


      1. ロック付きコネクターを切り離す場合は、コネクターをかん合側に押し、ロックのツメを動きやすくしてからロックをはずす。

      2. コネクターを切り離す場合は、ハーネスを持たずにコネクターを持って行う。

      3. コネクターの接続前に、端子の変形、損傷、抜けなどがないことを確認する。

      4. ロック付きコネクターの接続は、ロック音がするまで確実に差し込む。

      5. コネクターをトヨタエレクトリカルテスターで点検する場合は、ミニテストリードを使用してコネクターの後ろ側(ハーネス側)から行う。

        ■ 注 意 ■
        1. 防水コネクターはコネクターの後ろ側から点検できないため、サブハーネスを接続して点検する。
        2. 差し込んだテスター棒をむやみに動かして、端子を損傷させない。



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    3. コネクターの点検要領


      1. コネクター接続状態で、差込み具合、ロックの効き具合を点検する。(かん合状態)

      2. コネクター切り離し状態で、ワイヤハーネスを軽く引っ張り点検する。(端子抜け、端子かしめ状態、芯線切れ)

        ■ 注 意 ■
        金メッキのメス端子をテストする場合は、常に金メッキのオス端子を使用する。

      3. 発錆、金属片、水などの有無、端子の曲りの有無を目視点検する。(腐食、異物混入、端子変形)



      4. D020036
      5. 端子接触圧を、オス端子と同じ端子を用意してメス端子に差し込み、かん合具合、摺動重さを点検する。



      D020024
    4. コネクター端子の修理方法


      1. 接点部に汚れがある場合はエアガン、ウエスなどを用いて接点部を清掃する。このとき、表面のメッキがはがれてしまうため、サンドペーパーなどで接点部を絶対に磨かない。

      2. 接触圧力が異常な場合はメス端子を交換する。このとき、部品側の対応するオス端子が金メッキ(金色)の場合は金メッキ、錫メッキ(銀色)の場合は錫メッキのメス端子を用いる。

      3. 接点部に異常がない場合は、接点部をエアガンなどで清掃し、コネクタグリース(品番 08887-02106)を塗布しておく。(これにより接点の酸化、摩耗を防止できる)



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    5. トヨタ純正 コネクタグリース


      1. オルタネーターおよびヘッドランプなど水の掛かりやすい場所のコネクターには、端子の腐食を防止するグリース(白)が充てんされている。

      2. コネクターグリースが不足していたり、端子を修理した場合は、メス端子にコネクタグリース(品番 08887-02106,100g)を手で充てんする。

        ■ 注 意 ■
        1. ほこりなどを付着させない。
        2. ドライバーなど工具を使用して充てんしない。

      3. 防水コネクターのOリングおよびゴム栓にグリースが付着しても問題ないが、他のゴム部品(ウェザーストリップおよびワイヤハーネス用グロメットなど)に付着すると劣化および変色などのおそれがある。万一付着した場合は速やかにふき取る。



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    6. ワイヤハーネスの取り扱い


      1. ハーネスを取りはずす場合は、作業前に取り回しおよびクランプ状況を確認し、復元が確実に行えるようにする。

      2. ハーネスをねじったり、引っ張ったり、必要以上にたるませない。

      3. ハーネスを高温となる箇所、回転部、摺動部、振動部および鋭角部(パネル端部、スクリュー先端など)と干渉させない。

      4. 部品を取り付ける場合は、ハーネスを噛み込ませない。

      5. ハーネスの被覆を破らない。破れた場合は、交換するかビニールテープなどで確実に修正する。




    1. 断線回路点検
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      1. 図1のワイヤハーネスの断線回路に関して、どの部分が断線しているか、導通点検または電圧点検を実施する。



      2. D025066
      3. 導通を点検する。


        1. コネクターAとCをはずし、その間の抵抗を測定する。

          基準値
          1Ω以下

          □ 参 考 □
          ワイヤハーネスを軽く上下、左右にゆすりながら抵抗を測定する。

        2. 図2の場合、コネクターAの端子1とコネクターCの端子1の間 導通なし(断線)、コネクターAの端子2とコネクターCの端子2の間 導通あり、その結果、コネクターAの端子1とコネクターCの端子1間の回路は断線している。



        3. D025067
        4. コネクターBをはずし、コネクター間の抵抗を測定する。

        5. 図の3の場合、コネクターAの端子1とコネクターB1の端子1の間 導通あり、コネクターB2の端子1とコネクターCの端子1の間 導通なし(断線)、その結果、コネクターB2の端子1とコネクターCの端子1間の回路は断線している。



        D025068
      4. 電圧を点検する。


        1. 電圧をECUコネクター端子にかけている回路では、電圧点検を行うことにより断線回路を点検する。

        2. 図4に示すように、各コネクターを接続したまま、ECU5V出力端子でボデーアースとコネクターAの端子1間、次に、コネクターBの端子1、コネクターCの端子1の順に電圧を測定する。

        3. 下記の結果の場合は、Bの端子1とCの端子1の間のワイヤハーネスの回路が断線している。

          基準値
          コネクターAの端子1とボデーアースとの間が5V
          コネクターBの端子1とボデーアースとの間が5V
          コネクターCの端子1とボデーアースとの間が0V




      1. 短絡回路点検
        D025069
        1. 図5にあるように、ワイヤハーネスのアースが短絡している場合は、[アースとの導通点検]を実施し、どの部分に原因があるか点検する。



        2. D025070
        3. アースとの導通点検


          1. コネクターAとCをはずし、コネクターAの端子1と2とボデーアース間の抵抗を測定する。

            基準値
            1Ω以下

            □ 参 考 □
            ワイヤハーネスを軽く上下、左右にゆすりながら抵抗を測定する。

          2. 図6の場合、コネクターAの端子1とボデーアース間 導通あり(短絡)、コネクターAの端子2とボデーアース間 導通なし、その結果、コネクターAの端子1とコネクターCの端子1の間の回路は短絡している。



          3. D025071
          4. コネクターBをはずし、コネクターAの端子1とボデーアース間、コネクターB2の端子1とボデーアース間の抵抗を測定する。コネクターAの端子1とボデーアース間 導通なし、コネクターB2の端子1とボデーアース間 導通あり(短絡)、その結果、コネクターB2の端子1とコネクターCの端子1の間の回路は短絡している。




        1. 目視点検および接圧点検
          D020035
          1. 両端のコネクターをはずす。

          2. コネクター端子に錆はないか、異物がないか点検する。

          3. 丸くなっている部分に、緩み、損傷がないかを確認し、端子がロック位置にしっかりと固定されているか点検する。

            □ 参 考 □
            端子は後ろから軽く引っ張っても抜けないこと。

          4. オステスト端子を準備し、メス端子に挿入し、引き抜く。

            □ 参 考 □
            テスト端子が他の端子に比べて簡単に抜ける場合は、その部分の接触がよくない。




          1. ECU点検および交換
            D025072

            ■ 注 意 ■
            1. コネクターはECUに接続したまま、ワイヤハーネス側コネクターの裏側から点検する。
            2. 測定条件に表示のないものは、エンジン停止、イグニッションスイッチONの状態で点検する。



            1. 最初にECUのアース回路を点検し、不良の場合は修理する。正常であればECUが不良であるので、正常なECUと交換し、不具合現象が現れないか点検する。


              1. ECUのアース端子とボデーアース間の抵抗を測定する。

                基準値
                1Ω以下



              2. D025073
              3. ECUコネクターをはずし、ECU側とワイヤハーネス側のアース端子が曲がっていないか確認し、接圧を点検する。