ブレーキブースター(VSC非設定車)
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VSC非設定車に,10″シングルタイプのブレーキブースターを採用しました。
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ブースター内部にタイロッドを設定することで,ブースター作動時の剛性を確保することにより,ブースターボデーの板厚薄肉化による軽量化を実現しました。
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機械式ブレーキアシストシステムを採用しました。
機械式ブレーキアシスト付きブレーキブースターの構造
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ブレーキブースターのフローコントロールバルブ部に,入力ロッドとパワーピストンとの一定量の相対変位の発生で作動するフックとスライドバルブおよびスプリングを設定しました。
機械式ブレーキアシスト付きブレーキブースターの作動(ブレーキ非作動状態)
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一般的なブレーキブースターと同様,コントロールバルブは開いた状態で,変圧室と定圧室は連通状態です。
機械式ブレーキアシスト付きブレーキブースターの作動(ブレーキアシスト非作動時)
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ブレーキペダルを踏み込んだ時は,一般的なブレーキブースターと同様,コントロールバルブが閉じ,エアバルブが開きます。この時,定圧室にエアが導入されブースターが作動します。
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ブレーキ操作を保持した状態では,コントロールバルブ,エアバルブともに閉じており,変圧室と定圧室の差圧は一定に保たれます。
機械式ブレーキアシスト付きブレーキブースターの作動(ブレーキアシスト作動時)
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ブレーキの操作速度が大きいと,入力ロッドとパワーピストンに大きな相対変位が発生し,フックがスライドバルブから外れます。フックから外れたスライドバルブはコントロールバルブを押し,通常作動時よりも大きくエアバルブを開きます。これにより定圧室により多くのエアが導入され,大きな出力を得ることができます。
参 考
通常速度でブレーキを踏んでも,助勢限界以上に踏んだ場合およびブースター内の負圧が少ない場合ではパワーピストンの移動距離や速度は小さくなります。パワーピストンと入力ロッドの相対位置変化によりブレーキアシストが作動しますが,助勢限界を超える部位なので制動力は通常作動時と変わりません。
機械式ブレーキアシスト付きブレーキブースターの作動(ブレーキアシスト作動後)
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ブレーキOFFによって,スライドバルブに対してフックが初期位置に戻ります。
ブレーキアシストの考え方
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パニック状態に陥ったドライバーは,緊急制動時に,ブレーキの操作速度は速いものの強く踏めず,小さな制動力しか出せないことがあります。(図中a)また,こうしたドライバーは,制動後半,ブレーキペダルを長く踏み続けられず,制動力が低下することもあります。(図中b)
「ブレーキアシスト」は,ブレーキが速く踏み込まれた場合,ドライバーの緊急制動の意志を推定し,あまり強く踏めない場合でも制動力を確保します。(図中c)
「ブレーキアシスト」は,作動後にドライバーが意識してブレーキを緩めた時には,制動力のアシスト量を減らし,違和感を低減します。(図中d)
ブレーキアシストの注意事項
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ブレーキアシストは,ブレーキ本来の実力を超えた性能を引き出す装置ではありません。車速・車間距離などに十分注意して安全運転を行ってください。
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ブレーキペダルを急速度で踏んだ場合に,ブレーキが強くかかるようになり,小さな打音が発生することがありますが,これはブレーキアシストが正常に作動しているときの現象で異常ではありません。
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停止時にブレーキペダルを深く踏み込むと「カチ」音がする場合がありますが,アシスト機構部が正常に作動しているときの現象で異常ではありません。