構造と作動

シリンダーヘッド系

構 造

  1. シリンダーヘッド
    1. 吸排気効率の優れたクロスフローレイアウトおよび1気筒あたり4バルブのペントルーフ型燃焼室の採用により,大きなバルブ開口面積を確保し,全使用域での高出力化をはかりました。また,スパークプラグを燃焼室中央に配置し,燃焼効率の向上をはかりました。
    2. 燃焼室まわりの壁厚を最適化し,スパークプラグ周辺の冷却性を均一化することにより高圧縮化に対応しました。
    3. インテークポートに細径な縦型のポートを採用し,低中速トルクの向上をはかるとともに,燃料の壁面付着の防止をはかりました。また,インテークポート下部に冷却用のサブウォータージャケットを設け,信頼性の確保をはかりました。
    4. シリンダーヘッドボルトに塑性域締結を採用しました。

  2. シリンダーヘッドガスケット
    1. ステンレス材を基板とし,両面にゴムコーティングを施して密着性を確保しました。また,水通路穴を最適化し,水温分布の均一化をはかりました。

シリンダーブロック系

構 造

  1. シリンダーブロック
    1. オイル戻しおよびブローバイ通路11本,オイル通路2本で構成する骨格構造を採用するとともに,曲面構造として剛性を高めてパワープラントの曲げ共振の低減をはかりました。
    2. 補機類などの各取り付けボスを骨格部より出す構造とするとともに,外壁の曲面化により高剛性化をはかりました。
    3. エアコンコンプレッサー,オルタネーターなどの補機類を直付けとして振動の低減およびサービス性の向上をはかりました。
    4. ウォータージャケットの最適配置による冷却水量の低減により,軽量化をはかりました。
    5. クランクシャフトベアリングキャップボルトに塑性域締結を採用しました。
    6. シリンダーブロック左側面にノックセンサーを2個設けました。センサー内の振動板がノッキングの振動と共振することにより,圧電素子が電圧を発生します。
    7. クランクシャフトベアリングキャップ1に幅広タイプを採用し,振動および騒音の低減をはかりました。
    8. メインベアリング裏側のブロック側にオイル供給孔を設け,メインベアリングとシリンダーブロックへ充分なオイルを供給します。
    9. 仕 様
      全 長      [mm]
      615.5
      全 幅      [mm]
      374.0
      全 高      [mm]
      241.0
      ボア径      [mm]
      86.0
      ボア中心間距離  [mm]
      93.0

タイミング

構造と作動

  1. 油圧式オートテンショナー
    1. ベルトテンショナーは,内蔵式のスプリングでピストンロッドを介してテンションアイドラプーリーを押し,ベルトに適正な張力を与えています。また,張力は封入されたシリコンオイルとチェックボールの作用により,一定に保たれます。
    2. ベルトにゆるみが生じると,ロッドはスプリング力により上方に動き,A室のオイルはチェックボールを押し開いてB室に流入します。反対に,エンジン回転の下降時などでベルト張力が増加すると,テンションアイドラプーリーによってロッドが押されます。このときチェックボールがA室との通路を遮断しているため,B室は高圧となってロッドが押し込まれるのを防ぎます。
    3. 以上のように,ロッドが上下する一連の動きを繰り返すことにより,ベルト張力を一定に保っています。

バルブ系

構造と作動

  1. カムシャフト
    1. 高強度な合金鋳鉄製を採用し,ノーズ部にはチル処理を施して耐摩耗性を確保しました。
    2. カムジャーナルは各気筒のバルブリフター間に配置する7ジャーナルとし,剛性を確保しました。
    3. インテーク・エキゾーストともにジャーナル部およびギヤ部の潤滑はカムシャフト内部の給油孔より行います。
    4. VVT-iの採用に伴い,インテークカムシャフト1ジャーナルの幅を拡大し,VVT-i用オイル通路を設けました。また,カムプロフィールをVVT-i制御に最適なタイミングおよびリフト量としました。
    5. インテークカムシャフトの#5・#6気筒間にカムポジションセンサー用のタイミングローターを設けました。
    6. 仕 様
       
      インテーク
      エキゾースト
      バルブリフト量 [mm]
      8.52
      8.3
      カムフェイス幅 [mm]
      12
      12
      ジャーナル径  [mm]
      26   
      26

  2. バルブ・バルブリフター・バルブスプリング
    1. インテークバルブ・エキゾーストバルブともに高強度な耐熱鋼製を採用し,ステム部およびフェース部に軟窒化処理を施しました。また,エキゾーストバルブのフェース部に合金盛金を採用し,さらに耐摩耗性の向上をはかりました。
    2. バルブリフターは,アウターシム方式を採用し,バルブクリアランス調整時のカムシャフト脱着を不要としてメンテナンス性の向上をはかりました。
    3. バルブアジャスティングシムは,表面に窒化チタンコートを採用し,フリクションロスの低減をはかりました。
    4. バルブスプリングに特殊バネ用炭素鋼を採用し,スプリング張力の最適化によりフリクションロスの低減をはかりました。
    5. バルブ仕様
       
      インテーク
      エキゾースト
      全 長   [mm]
      98.54
      99.09
      かさ部径  [mm]
      33.5
      29.0
      ステム径  [mm]
      6.0
      バルブスプリング仕様
      コイル内径 [mm]
      18.0
      線 径   [mm]
      3.3
      自由長   [mm]
      44.1
      バルブリフター仕様
      材 質
      クロムモリブデン鋼
      全 高   [mm]
      24.5
      外 径   [mm]
      31.0
      バルブアジャスティングシム仕様
      材 質
      クロムモリブデン鋼
      外 径   [mm]
      28.0

  3. VVT-i(Variable Valve Timing-intelligent:連続可変バルブタイミング機構)
    1. エンジンの高出力化をはかるとともに,低燃費・低エミッション化との両立をはかるため,VVT-iシステムを採用しました。運転状態に応じ,最も効果的なバルブタイミングに制御します。
    2. エンジンコントロールコンピューターは,カムキャップ1に設けられたOCV(オイルコントロールバルブ)に信号を送ることにより,オイルポンプ発生油圧をVVT-iコントローラーの進角室もしくは遅角室に振り分け,運転状態に応じたインテークカムシャフトの位相に制御します。
    3. カムポジションセンサーからの信号により,実バルブタイミングを検出し,目標バルブタイミングとなるようにフィードバック制御を行っています。
    4. VVT-iコントローラーの作動油圧は,シリンダーブロックからVVT-i用オイルパイプで供給されます。また,オイルパイプ上部のユニオンにOCV用のオイルフィルターを内蔵しました。
      1. 構 造
        1. VVT-iコントローラー
          1. VVT-iコントローラーはインテークカムシャフトに取り付けられており,内部のヘリカルギヤにかかる油圧を調整することによりインテークカムシャフトの位相を連続して可変させます。
          2. タイミングプーリーに固定されたアウターヘリカルギヤ,インテークカムシャフトに固定されたインナーヘリカルギヤ,および内外周にヘリカルスプラインを有する可動ピストンにより構成されます。
          3. エンジンコントロールコンピューターからのデューティー信号により,OCV(オイルコントロールバルブ)のプランジャーが駆動され,スプール弁を動かしてVVT-iコントローラーの進角室および遅角室にかかる油圧を切り替えます。
          4. OCVからの油圧がインテークカムシャフト内のオイル通路から可動ピストンにかかり,可動ピストンを軸方向へ回転させます。この際,ヘリカルスプラインによりアウターヘリカルギヤとインナーヘリカルギヤが相対方向に回転させられるため,タイミングプーリーとインテークカムシャフトに位相差が生じます。
          5. 運転状態に応じて常に最適なバルブタイミングとなるように,この位相差を制御します。
        2. OCV(オイルコントロールバルブ)
          1. エンジンコントロールコンピューターからのデューティー信号により,常に最適なバルブタイミングとなるようにスプール弁の位置を制御します。なお,停止時はスプリングにより最遅角状態で作動を停止します。
      2. 作動概要
        1. 進角時
          1. ECUからの信号によりOCVが図の位置になると,ピストンは右側へ移動し,ピストンに切られたヘリカルスプラインのねじれによりインテークカムシャフトは,スプロケット(エキゾーストカムシャフト)に対して進み側へ回転します。
        2. 遅角時
          1. ECUからの信号によりOCVが図の位置になると,進角時と比べオイルは逆に流れインテークカムシャフトは,スプロケット(エキゾーストカムシャフト)に対して遅れ側へ回転します。
        3. 保 持
          1. ECUは走行状態に応じ目標進角度を算出し,上記制御を行います。目標タイミングにセット後は走行状態が変化しないかぎり,そのタイミングをOCVを中立にする事によって保持します。これにより,任意の目標位置へバルブタイミングを合わせるのと同時にエンジンオイルの不必要な流出を抑えています。
      3. 効 果
        1. インテークバルブの進角・遅角により下記のような効果が得られます。

ピストン・クランク系

構 造

  1. ピストン・ピストンピン・ピストンリング
    1. 厚肉のピストンピンを採用して剛性を高め,高出力化に対応しました。ピストンとの結合はフルフローティングタイプとしました。
    2. ピストンリング溝部にホールタイプ*のオイル逃がし穴を採用するとともに,スカート部の高剛性化,ピン穴オフセット量の最適化などにより低騒音化をはかりました。また,スカート部に樹脂コーティングを施し,フリクションロスの低減をはかりました。
    3. □ 参 考 □
      *:開口面積が小さいため,高剛性化がはかれます。また,ピストン頂部の熱がスカート部に逃げやすくなり,耐ノッキング性に効果をもたらします。

      ピストン仕様
      材 質
      アルミ合金
      基本径 [mm]
      85.935
      全 高 [mm]
      65.0
      ピン穴オフセット[mm]
      1.2
      ピストンピン仕様
      材 質
      クロム鋼
      外 径     [mm]
      22.0
      内 径     [mm]
      12.7
      長 さ     [mm]
      66.0
      ピストンリング仕様
       
      コンプレッションリングNo.1
      コンプレッションリングNo.2
      オイルリング
      材 質
      クロム鋼
      片状黒鉛鋳鉄
      硬鋼線材
      形 状 [mm]
      バレルフェース
      テーパーフェース
      組み合わせ
       幅  [mm]
      1.5
      4.0
      厚 さ [mm]
      3.3
      3.6
      2.8
      表面処理
      クロムメッキ + ホーニング仕上げ
      亜鉛系リン酸被膜
      クロムメッキ

  2. コネクティングロッド
    1. 高剛性なバナジウム鋼製を採用し,振動・騒音の低減をはかるとともに,高出力化に対応しました。大端部にピストン冷却および潤滑用のオイルジェットを設けました。コネクティングロッドとコネクティングロッドキャップの結合にノックピンを採用し,組み付け精度を確保しました。また,ナットを不要とした塑性域締結ボルトを採用し,軽量化による振動の低減,および締め付け力の安定化をはかりました。
    2. 仕 様
      材 質
      バナジウム鋼
      大端部内径     [mm]
      55.0
      小端部内径     [mm]
      24.0
      大小端部中心間距離 [mm]
      125.25

  3. クランクシャフト
    1. 鍛造製の7ジャーナル12バランスウェイト型を採用しました。アーム形状の最適化,クランクピンおよびジャーナル部の高周波焼き入れ処理などにより高い剛性を確保し,振動・騒音の低減をはかりました。
    2. クランクシャフトベアリングにアルミ合金製を採用し,耐摩耗性の向上をはかりました。また,#1ジャーナルのベアリング幅を幅広とし,振動・騒音の低減をはかりました。
    3. 仕 様
      ジャーナル径        [mm]
      62.0
      クランクピン径       [mm]
      52.0
      クランクピンストローク半径 [mm]
      35.75

  4. クランクシャフトプーリー
    1. ダブルマスのトーショナルダンパー付きクランクシャフトプーリーを採用しました。2個のダンパーの慣性モーメントおよびゴム硬度・材質の最適化によりクランクシャフトのねじり振動を大幅に抑え,振動・騒音の低減をはかりました。また,ハブ材質にはアルミ合金およびFRM(FiberReinforced Metal)を採用して軽量化をはかり,振動の低減およびレスポンスの向上をはかりました。

その他のエンジン部品

構 造

  1. エンジンマウンティング
    1. フロントエンジンマウンティングに液体封入式を採用し,全エンジン回転域で振動・騒音の低減をはかりました。
    2. フロントエンジンマウンティングブラケットにコーン状のアルミ合金製を採用し,軽量化および振動・騒音の低減をはかりました。
    3. フロントエンジンマウンティングの取り付け位置を振動の少ないシリンダーブロック上方とするとともに,ブラケット角度を穏やかにすることで,振動・騒音の低減をはかりました。

  2. 補機レイアウト
    1. 1本のベルトで全ての補機を駆動するサーペンタインベルトドライブシステムを採用し,エンジン全長の短縮,軽量化およびサービス性の向上をはかりました。
    2. Vリブドベルト用オートテンショナーを採用し,ベルトおよび補機類の長寿命化とメンテナンスフリー化をはかるとともに,ベルト脱着時のサービス性に配慮しました。Vリブドベルトの張りは,オートテンショナー内蔵のコイルスプリングにより適正値に保たれます。
    3. プーリー径
      クランクシャフトプーリー       [mm]
      193.0
      オルタネータープーリー        [mm]
      57.5
      ウォーターポンププーリー       [mm]
      112.0
      パワーステアリングプーリー      [mm]
      140.0
      エアコンプーリー           [mm]
      120.0
      オートテンショナー用アイドラプーリー [mm]
      62.0

  3. ブローバイガス還元装置
    1. エンジン内部のブローバイガスを強制的に吸気系に導入し再燃焼するブローバイガス還元装置を採用しました。シリンダーヘッドカバーにPCVバルブを設け,運転状態に応じたブローバイガス還元量にすることによりオイル持ち去り量の低減・アイドリング回転の低回転化をはかりました。
    2. 低負荷時はPCV側ブローバイ通路から還元し,スロットルボデー上流側通路は新気をエンジン内部に導入します。また,高負荷時は,PCV側通路と合わせてスロットルボデー上流側通路からも還元します。